28(にいはち)の由来|仁王雅治×柳生比呂士が数字で呼ばれるまで

「に」で2、「や」で8。それだけです。姓の頭を数字読みしただけの、身も蓋もない名付け。ところがこの並び順が効きます。28は仁王雅治×柳生比呂士、ひっくり返した82(はちに)は柳生比呂士×仁王雅治。数字の順番が、そのまま左右の宣言になっているんですね。

おもしろいのは、その二つがほぼ拮抗していること。pixivのタグ件数は28が2,518件、82が2,152件でした(2026年8月5〜6日時点、未ログイン検索でイラスト・漫画・小説を合計した数)。差は1.2倍ほど。同じ条件で乾海と海乾は約24倍、ちとくらとくらちとは約26倍。左右が片方向へ振り切れているCPでは、逆順がこの桁で沈みます。この二人はそうなっていません。

もう一つ厄介なのが、名前が散らばること。同じ二人が「28」でも「仁王×柳生」でも呼ばれ、一般向けのコンビタグとしては「立海D1」(同時点で273件)も使われます。立海D1はオーダー表記のダブルス1を借りたタグで、作中でそう呼ばれている呼称ではありません。2013年冬のコミケカタログのCP表記調査(総表記388件)では28が2位の9表記、82が8位タイの6表記。ただし同調査は、これらの表記を名寄せして合計すると「仁王×柳生」が首位の「謙光」を抜いてトップに出ると書いています。単一タグの件数だけを見て順位を語ると、この二人は必ず過小評価される。

入れ替わりで勝った関東大会決勝|ペテン師と紳士のダブルス

公式の紹介文が、二人の距離をいちばん短く説明してくれます。

「変幻自在、予測不可能なプレイで対戦相手を翻弄させる。コート上の詐欺(ペテン)師とも呼ばれる。」

『新テニスの王子様』公式サイト 立海大附属中学校・仁王雅治 紹介文

「一見クールだが、勝利に対する執着心は強く、気高き情熱家。対戦相手を気遣う優しさを持っていて、全てにおいて紳士的。」

『新テニスの王子様』公式サイト 立海大附属中学校・柳生比呂士 紹介文

騙す側と、相手を気遣う側。並べれば正反対です。その二人が組んだ関東大会決勝の対青学戦で起きたのが、あの入れ替わりでした。仁王が柳生比呂士に変装してコートに立ち、大石秀一郎・菊丸英二の黄金ペアを混乱させて6-4。作者が作品のターニングポイントとして挙げた場面でもあります。

ここで見落としたくないのは、柳生の反応です。策として成立していても、相手を騙すこと自体には不本意さを見せていました。勝ち筋には乗る。けれど手口には納得していない。それでもコートに残り、仁王のやり方を止めなかった。この「止めない」がこのペアの土台だと思うんです。

ミニチュアのテニスコートで向かい合い、相手とそっくり同じ構えを鏡写しにまねている二体の木製マネキン

変装が成立する条件も地味に重い。相手の癖を写し取れるほど見ているということです。しかも一方通行ではありません。柳生の側は仁王のイリュージョンをほぼ見抜けると描かれ、仁王を長い付き合いの親友として、思っていることが手に取るように分かると語っています。真面目な優等生と、語尾に「ぜよ」を付けるトリックスター。性格の相性で説明できる関係ではないのに、噛み合っている。

そもそも柳生は元ゴルフ部で、テニス部へ引っ張ってきたのが仁王です。この二人の関係は、仁王が柳生を選んだところから始まっている。紳士がペテン師の隣にいるのではなく、ペテン師が紳士を連れてきた。順番が逆なんですね。

82へ反転した日|新テニで柳生比呂士が仁王雅治を騙して残る

関東大会決勝の構図なら、左右は決まりに見えます。仕掛けるのが仁王、乗るのが柳生。28の並びどおり。ところが『新テニスの王子様』のU-17合宿で、この役割が正面から崩されます。

脱落タイブレークマッチで当たった二人。仁王は柳生を詐欺に掛けようとして、見破られます。そのうえ逆に詐欺へ掛けられて敗北。柳生は軌道の曲がるレーザービームで決着をつけ、合宿に残留しました。残ったのが幸村精市・柳生・丸井ブン太・切原赤也、脱落したのが真田弦一郎・柳蓮二・仁王・ジャッカル桑原。立海の三強が二人も落ちた側に、コート上の詐欺師も一緒に落ちています。

騙し合いで紳士が勝った。しかも仁王のやり方をそっくり借りて勝った。ここが82(はちに)というタグが2,000件超で並走する理由だと、PUTONは読んでいます。柳生比呂士は仁王の手口を理解しているだけでなく、必要なら自分で使う人物として描かれている。上に立つ場面が公式にある以上、左右が一方向へ固定されないのは自然です。

「ワカメ野郎」を先に言ったのは紳士のほう

もう一つ、順番が入れ替わっている例があります。全国大会準決勝の名古屋星徳戦、柳生は後輩・切原赤也への英語訳に「このワカメ野郎」を勝手に足しました。相手選手はそんなことを言っていません。切原の悪魔化を引き出すための一手で、後からわざと同じ言葉を使ったのが仁王です。

普段の柳生は、後輩ですら苗字に「君」を付けて呼びます。その人物が最初に嘘を混ぜ、詐欺師のほうが追随した。28で仕掛ける側とされる仁王が、ここでは乗る側に回っています。

試合の勝ち負けだけを並べれば、関東大会決勝は仁王の入れ替わり、合宿の同士討ちは柳生の勝ち。単純な五分です。ただ、この二人が交換しているのは勝敗ではありません。変装される顔、見抜かれる手口、先に言い出す嘘。どれも相手の役をいったん引き受けないと成立しないものばかり。28と82が両方生き残っているのは、ファンが決めかねているからではなく、公式の場面がその都度ひっくり返してくるからです。